第2回坂田記念ジャーナリズム賞(1994年)

(敬称略)

第1部門(スクープ・企画報道)

放送の部

【坂田記念ジャーナリズム賞(1件)】

★毎日放送報道局記者・榛葉健
錯覚商法スクープ

第2部門(国際交流・国際貢献報道)

海外研修補助

・産経新聞大阪本社「関西発! LOOK WEST」取材班(代表=小原常雄・編集局次長)

・奈良新聞社「固定資産問題」特別取材班(代表=浅野詠子・政経部課長)

昨年の研修

・毎日放送フロン問題取材班
 木田洋一記者らを平成6年11月中国内蒙古自治区へ派遣、大阪の業者がタイの華僑と手を組み、日本向けに無農薬を売り物にしたコメの大生産基地を作りつつあり、つぶさに取材、報道しました。

・NHK大阪放送局アジアマンスリー取材班
 報道部の木下富夫ディレクターが平成6年5月香港、台湾で関西国際空港の開港に伴う日本市場への参入について探りました。その取材は同年秋に放送されたテレビ番組「プライム11・手さぐりの日本進出~ アジアの企業は大阪に何を見たか」制作の参考にされました。

・京都新聞社「世界はいま」取材班
 大橋昌子記者が平成6年4月下旬シンガポールで、わが国の宗教教団の海外布教と現地での反応を取材。道又隆弘記者が7月下旬ベトナムで、ドイモイ導入の中の若者の活躍を探りました。いずれも連載企画「こころの世紀」第5部「海を越えて」と「ドイモイに映る顔」(変わるベトナムで)に反映されました。

第2回坂田賞授賞理由

第1部門(スクープ・企画報道)

新聞の部

【坂田記念ジャーナリズム賞(1件)】
★毎日新聞大阪本社「日本商事・ソリブジン問題」取材班
 代表=朝野富三・社会部長

推薦理由

 取材班は、特別報道部と社会部で編成、調査取材を特報部、大阪地検取材を社会部が担当。「日本商事」(大阪市)が製造した抗ウイルス「ソリブジン」が平成5年9月の発売直後から約1ヵ月間に抗がん剤との相互作用による副作用で死者15人を出した問題で平成6年3月5日朝刊に「死者公表直前、自社株5万株売り抜け」と第1報をスクープ。それがきっかけで証券取引等監視委員会が本格調査に入りました。一方、多くの犠牲者を出した薬品の製造、 承認段階での問題についても追及、12月まで調査報道を続けました。

授賞理由

 証券市場、新薬承認制度の問題点を明らかにしたことで、選考委員会では「現代社会の病根といえる部分に粘り強く調査を続け、大きな社会的貢献をした」と評価されました。

放送の部

【坂田記念ジャーナリズム賞(1件)】
★毎日放送報道局記者・榛葉健
 錯覚商法スクープ

推薦理由

 榛葉記者は、NTT職業電話帳「タウンページ」の広告主のもとに、NTTの請求書まがいの振込用紙を送りつけ、巧妙な手口で広告料金をだまし取る“錯覚商法”に気付きました。ほとんど広告効果のないと思える「広告冊子」を印刷して “詐欺逃れ”をしており、広く被害者が出ているのを知りました。東北地方など全国各地に飛び、業者に対する執拗な取材などで全貌把握に努めました。その結果27年も前から続く悪質な商法で、延べ10万人が被害に遭い、金額も約30億円にのぼると推定されました。その実態は7月から10月にかけ「MBSナウ」やTBS系全国ネット「報道特集」で計10回放送されました。反響は大きく全国から400通を超える情 報提供もありました。

授賞理由

 選考委員会では「違法合法のボーダーライン上にうごめく現代犯罪の典型を取り上げ、市民に警鐘を鳴らした」と評価されました。

第2部門(国際交流・国際貢献報道)

新聞の部

【坂田記念ジャーナリズム賞(1件)】
★朝日新聞大阪本社「この国の足音」取材班
 代表=法花敏郎・社会部次長

推薦理由

 国連の「国際家族年」(1994年)にあたり、経済成長を遂げて豊かになった日本が抱える問題点を海外の人たちとの接点でとらえる年間の企画で、4部構成、取材班は19人の編成でした。
 第1部(1月)の「赤ちゃんの旅立ち」は望まれずに生まれた赤ちゃんが1人200万円から300万円で米国の養父母に引き取られる実態を取り上げました。次いで第2部(3、4 月)「消えた花嫁」はアジアの女性が日本の男性と業者斡旋で結ばれる国際結婚事情を描きました。そして第3部(6月)「海を渡るサッカー少年」はサッカーブームのなかブラジルに留学する青少年が急増している実態を明らかにしました。最後の第4部(11月)「遙かな海」は飽食ニッポンの食卓を支える遠洋漁業が空洞化し、漁船員も漁船もアジアの国に依存している姿を紹介しました。

授賞理由

 選考委員会では、「国際家族年にふさわしい報道で、現在日本でおこっている社会現象を着実に追っている」と評価されました。

放送の部

【坂田記念ジャーナリズム賞(1件)】
★関西テレビ放送報道部「戦後補償特集」取材班
 代表=徳永俊彦記者

推薦理由

 従軍慰安婦問題では3年前に韓国で取材に着手し、元従軍慰安婦をはじめ元軍人、元軍属の生の声を放送し、問題提起をしました。韓国の元従軍慰安婦らが日本の戦後補償を求める訴えを東京地裁へ起こし、3年。裁判は、原告たちの高齢化で相次いで病死する中、判決の見通しはまだつかない。さらに政府の対応も「個人への謝罪」とも「補償」とも言えない玉虫色でした。戦後50年、同取材班は繰り返し、元慰安婦や元軍属の遺族などに取材を進め、彼らの問いかける意味を探り、深めました。それらは、12月に夕方のニュース番組「アタック600」で計4回、シリーズ企画「戦後補償特集」として放送されました。

授賞理由

 選考委員会では「日本人の“負の遺産”検証と、その問い直しは社会的意味も大きかった」 と評価されました。

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