第14回坂田記念ジャーナリズム賞(2006年)
(敬称略)
第1部門(スクープ・企画報道)
新聞の部
放送の部
【坂田記念ジャーナリズム賞(1件)】
奨励賞=海外研修補助
・毎日新聞大阪本社世界考古学会議取材班
(代表=佐々木泰造・学芸部編集委員)
「世界考古学会議」一連の報道
2006年1月に大阪で開かれた東アジアで初の世界考古学会議(WAC)に企画段階から参画し、日本の考古学の国際化の必要性、世界の人々と議論する意義を読者にわかりやすく伝えた。WACは世界最大の考古学の学会だが、日本ではほとんど知られておらず、大阪大会の開催を日本の考古学のあり方を問い直すきっかけにすることを主眼に報道した。様々な記事を通じて、「共生」をテーマとした大阪大会の議論が現代の国々の平和共存にもつながること、先進国と途上国の共同調査の問題点などを詳報。文化面では、日本ではほとんど語られることのない考古学の海外調査の倫理や中立性をめぐる議論に触れた。12月に豪州で開催されたWACシンポジウムにも参加、日本が世界の議論に加わる必要性を訴えた。一連の記事は、発掘調査成果の紹介を中心とする従来の報道とは異なる新しい考古学報道のあり方を示すものとして、国内外で評価された。
選考委員会では「考古学会議がこれほどまで現代的問題を掘り下げようとしているとは知らなかった。考古学はもはや展示館に封じ込められるものではなく、世の中に裸形を現し、 警鐘を鳴らす存在である。まさに考古学は人間学そのものであり、現代学の根源である。 「考古学の海外調査における倫理』は、古くて新しい問題。考古学者は辺境で資源を発掘し自らの手柄にはするが、現地の地域社会には何の貢献もしない例が多かった。このようなとき「共生の英知」「共生の考古学」のキーワードを掘り起こし提示した報道活動は、現代の風潮に対する直言であり、挑戦である」「考古学の国際交流、とくに日本の力量発揮、国民を巻き込んだ議論の必要性などがよくわかった記事だった」などと評価された。
・朝日放送「ムーブ!」社保庁の闇取材班
(代表=藤田貴久・報道課長)
「ムーブ!」社会保険庁の年金不正免除スクープ
社会保険庁は新組織に移行予定だが、国民の将来に禍根を残さないためにも、メディアは社保庁の実態を抉り出し、議論を再燃させる必要があった。取材班のこのスクープによって大阪社会保険事務局は全面的に謝罪し、大阪府内で3万7千を超える年金不正免除があったことを認めた。これを機に、不正免除は一気に表面化し、社会保険庁は不適切免除を加えると2006年6月13日現在36都道府県で約21万件の不正があった事実を公表した。国会は紛糾し、審議中だった社会保険庁改革法案は先送りとなった。さらに取材班は不正免除申請書の実物コピーも入手。そこに職員による偽造の署名があり、公務員による組織ぐるみの犯罪性を暴いた。これらの結果、保険料の実質的な納付者は約半分にすぎないこともわかり、 年金制度の根幹が揺らいだ。さらに、消えた年金データの発覚へと発展。取材の目的である年金問題の議論再燃を果たした。
選考委員会では「社会保険庁のいい加減さは新聞報道で伝えられていたが、テレビ番組の具体性は直接担当者やその上司たちの態度や表情から、そのでたらめな実態が読みとれるところにある。たとえそれが電話取材であってもその取材現場を映し出すことにより、その対応の仕方そのものが事態への返答を物語っている。この番組では、不正行為の明らかな犯罪性を粘り強くつきとめ、厳しく論評することで、視聴者にわかりやすく解説してみせた」「従来、国家公務員の名の下に放置されてきた親方日の丸組織における正体を暴露したもので、その影響するところは極めて大きい」「動かぬ証拠をつかみ積極的な取材をしたことや、市民の協力を得られたことが番組の成功につながった」などと評価された。
昨年の研修
・日本経済新聞大阪本社連載企画「アジアと関西」取材班
(代表=丸山兼也・大阪経済部次長)
広州の熱い風 日本経済新聞社大阪経済部(現・東京経済部)秋山文人
「アジアのハブ空港」を目指して作られた中国・広州白雲国際空港を降りたって、まずその暑さに驚いた。開くと気温は35度。熱風と日差しがじりじりと体を直撃する。暑い夏は大阪生活で慣れたと思っていたが、この暑さには閉口した。「中国でも最も南に位置する大都市。気候は東南アジアと思った方がよい」と出国前に言われた。駐在3年目を迎える広州支局長は「この気候に慣れると日本の方が過ごしにくく感じる」と言うが、どうにも実感がわかない。
今回広州を訪れたのは、ある電機メーカーの工場を見学するためだ。大阪の中堅電機メーカー、船井電機。大手メーカーのOEM(相手先ブランドによる生産)を引き受け、テレビやDVDプレーヤー、プリンターなどを大量生産している。米国の巨大量販店チェーン、ウォルマートとの取引を軸に成長し、2006年3月期の連結売上高は約3600億円、営業利益は約230億円に達する。低価格で安定した品質のものを大量に作るという船井の強み。その原動力が、東莞、中山、黄江 という広州内の3拠点にある「船井中国工場」だ。証券会社や金融機関のアナリストの見学ツアーに同行した。
ワンフロアに、平均年齢19歳前後という若い労働者1000人が生産ラインを前に一心不乱に作業する風景。他メーカーでは自動化が進む中、人海戦術を愚直に貫く。設備投資を抑えられる上、常に生産効率を高めるための施策が可能になる。例えば労働者一人ずつに割り当てられたボタン。不良が発生した時にこのボタンを押すと、ラインが止まる。ラインがよく止まるところは作業員を増員する。逆にラインがスムーズだと人を減らして一人あたりの生産性を上げる。30年前、トヨタ自動車の生産工場を訪れ、学んだ生産方式。船井流にアレンジされ、「フナイ・プロダクトシステム」として今に至る。
中国の人件費の安さを武器にしたこの生産方式も転換点を迎えている。2008年の北京五輪に向けて急成長する中国経済。人件費の高騰や人手不足など、新たな問題も生じてきた。中国人労働者の質も問われている。最近は労働者もおしゃれになった。あるプリント基板に電子部品を実装する工程でのこと。従事している女性の爪は、マニキュアを塗ったりネールアートを施したりするためか、細かい作業には不都合なくらい長い。だが「もし爪を切れといったら、辞められてしまいますねん」と工場長は苦笑い。以前は3~4年間は従事してくれたこの仕事も、最近では1~2年間。数カ月で居なくなる場合もあるし、朝起きたらラインのチームごといなくなっていたことも。多くは農村部からやってくる彼ら。数年勤めたら故郷に錦を飾れるほどの仕事だが、最近ではアルバイト感覚が浸透してきたという。
近代的なビルや工場が次々と建設される広州。町並みや郊外の風景は雨後のたけのこのようにめまぐるしく変わるのが感じられる一方で、目に見えない中国の人たちの心情や考え方も変わりつつある。
・朝日放送ドキュメント・スペシャル「終わりなき葬列 発症まで30年、いま広がるアスベスト被害」取材班
(代表=宮沢洋・報道部ニュースセンターディレクター)
「割りばし」が語る中国の今 朝日放送報道局ニュース情報センター宮澤洋一
2006年7月、1週間の日程で中国の大連市、煙台市、そして北京に行きました。目的は日本に輸出される「割りばし」の生産状況を取材するためです。日本で消費される割りばしの98%が中国産です。その中国が輸出価格の5割の値上げを打ち出し、将来的には生産(=輸出)自体を停止する可能性があるというのです。理由は、環境保護です。経済成長を続ける中国では、森林破壊や砂漠化が深刻で、使い捨ての割りばしに批判の矛先が向けられているのです。
大連市のある割りばし工場は1日で250万膳を生産しています。材料は中国東北部で採れるシラカバなどですが、中国国内の建設ラッシュや環境保護のための伐採規制などがあって木材価格が急騰しています。このため、最近ではロシアから輸入した木で割りばしを作り日本に輸出する量が増えているということです。割りばしの生産停止に関して工場長は否定的でしたが、全国人民代表大会のある代表は「日本への輸出のために毎年250万本の木が切り倒されている」とした上で「生産停止の議論は今後8年以内に起こるだろう」と話しました。中国産割りばしは1膳が1円未満という安さで、日本市場を制覇しました。今のところ値上げによる深刻な影響はなく、日本企業も中国の出方を静観しています。今後、中国の環境問題と日本の関わりは、さらに重要な取材テーマになると思いました。
今回、中国国内の取材を初めて経験しました。取材中は中国政府の役人が付き添い、自由に取材で動き回ることは出来ません。何より驚いたのは、毎晩開かれる「宴席」でした。アワビやナマコといった高級食材を使った料理が食べきれないほど出され、残ったものは捨てられてしまう、中国の文化なのかもしれませんが、その豪華な料理と旺盛な食欲に経済発展を続ける中国の姿を見た思いがしました。
・読売テレビ放送報道局ディレクター・十河美加
NNNドキュメント’05「赤ちゃんと語ろ~笑わない天使たちのSOS」
アンコールワットをたずねて 読売テレビ放送報道撮影部・稲津勝
カンボジアの首都プノンペンの北西約300キロに位置するアンコールワットの町、シェムリアップ。素朴で小さな町だが、アンコール遺跡観光の拠点として、ホテルなどが次々に建設され、年々成長しつづけている活気のある町である。シェムリアップ中心地から北に車で20分ほど走ると、密林の中にアンコールワットが見えてくる。12世紀前半スーリヤヴァルマン2世によって30年余りの年月を費やし建造されたと言われるヒンドゥー教寺院(現在は仏教寺院)。東西1.5キロ、南北13キロにもわたる広大さに圧倒される。
正面入り口の西参道は540メートルもあり、地盤沈下による石段の修復が行われていた。遺跡修復には世界各国の援助があり日本も政府のアンコール遺跡救済チームが旧王都アンコールトムの寺院バイヨンの保存修復などのプロジェクトに参加している。
中央塔を囲むように4つの塔があり、それをつなぐのが第3回廊。そのまわりに第2回廊、第1回廊があり、数多くのレリーフが施されていた。ヒンドゥー教の天地創造の神話 「乳海撹拌」や「天国と地獄」の様子が描かれたものなど、どれも繊細で躍動感あふれる彫刻ばかりで、それを手の届く距離で見られるのには驚かされる。なによりも圧倒的なのは、 自然損傷や略奪、内戦などによる破壊の危機に見舞われながらも、約700年もの間この遺跡がここに存在していることに心底驚かされる。アンコールワット造営から半世紀後、周囲12キロの城壁に囲まれた王都、アンコールトムが建造される。敷地内にはいくつもの遺跡があり、その中心には仏教寺院バイヨンがある。ここには、建設者のジャヤヴァルマン7世が信仰した観世音菩薩の四面仏50基ほどがあり、その大きさは、顔だけで人の背丈ほどある。少し微笑んだその表情は、それぞれが違った顔になっていて、どこか馴染みのある雰囲気を感じた。
世界遺産の指定によって、シェムリアップの町はこの10年でめまぐるしく変化していると聞く。人々の暮らしも良くなり、その一方で失われるものもあるのかもしれない。経済的に貧しい国を訪れるたびに強く感じるのは、幼い子供たちの輝くひとみで、そこには生の喜びを感じる。日本では犯罪の低年齢化や、未来に目標を持てない若者たちなどが増えている。豊かな我が国はいったい何をなくしてきたのだろうか。カンボジアの無邪気な子供たちのあの表情が、この先も変わらぬまま、そこにあってほしいと強く感じた。
第14回坂田賞授賞理由
第1部門(スクープ・企画報道)
新聞の部
【坂田記念ジャーナリズム賞(2件)】
★産経新聞大阪本社「死を考える」取材班
代表=皆川豪志・社会部記者
長期連載「死を考える」
推薦理由
一般の新聞記事では正面から取り上げられることの少なかった「死」をあえて問うことで、 「生きる」ことの意味を読者に突きつけた。朝刊1面で「死」とは縁起でもないという社内での議論もあったが、読者から「毎朝涙がとまらなかった」「人生を見つめ直すきっかけになった」など反響は大きく、第1部から第6部までの長期連載企画となった。「そもそも社会部とは、人の死を掘り下げて取材するのが仕事だ。その原点に立ち返りたい」「死を考える ことは命の尊さを考えることではないか」。取材班はそんな思いでこのテーマに取り組んだ。すべての人が必ず迎える「死」を考えることは、日本社会を考えることに他ならない。崩壊しつつある家族や地域社会、倫理的危機を迎える医療現場、急速に進む高齢化、弱者を救えぬ法律の不備……。そこには現代社会のほころびが、ありのまま凝縮されていた
授賞理由
選考委員会では「混乱のこの時代は、多くの死にあう時代である。死は生の断面であって、 生の断面を見ることによって生の意義を知ることができる。本編は6つの切り口で生の断面を読む人に突きつけたものであって、極めて価値が高い記事である。切り口も良く、切り方も良く、絶賛したい」「この企画は、ジャーナリズム独自の手法により新聞本来の機能を十全に発揮して成功したといえる。第1部から第6部まで、そのすべてが生死の百科であろう。本企画は多種多様の生と死のあり方を示した。しかし、生と死の定義をしていない。 そこがいい」「事件として現象した事象が日常見えにくい生活断面とどう関わっているのかを『死を考える』という視点で改めて考える重要なきっかけを与えた企画。平素深く考えることの少ない死の現実を、われわれを取り巻く身近な日常に即して追求を試みた新聞ならではの取材が光った」などと評価された。
★毎日新聞大阪本社医療問題取材班
代表=井上朗・奈良支局長
「奈良の妊婦死亡をはじめとする医療体制の不備を問うスクープとキャンペーン」
推薦理由
取材班は、奈良県大淀町立大淀病院で意識不明になった妊婦の転送先が18病院に断られ、帝王切開で出産したものの8日後に死亡した問題を10月17日朝刊で特報した。情報をキャッチしてから約2カ月。遺族との信頼関係を築き、写真入り実名で紙面化した。以来、産科救急システムの機能不全が大阪府でも進んでいる実態や、厚生労働省が進める総合周産期母子医療センターの未整備、8県でめどがたっていないことなどを報じ、貧弱な医療体制を問うキャンペーンとして展開。連載企画「医療クライシス~忍び寄る崩壊の足音」を全国通しで続報、多くの反響を呼んだ。一連の調査報道は国会でも取り上げられ、柳沢伯夫厚労相が総合周産期母子医療センターの期限内整備のため補助金支援に乗り出すことを表明、 奈良県もセンター開設を決めるなど、国、自治体 の医療行政の改善を促した。
授賞理由
選考委員会では「死は人間の避けられないものである。近時、国家が経済的視点から医療の負担軽減を考えているが、この問題は国民に国家の愛情を示しうる重要な政策であるので、その一例として不備を示し得たことは大きい。これを医療全体の問題として強調してほしい」「柳沢発言(「女性は子どもを産む機械」)の最も根っこの部分でもある医療体制の矛盾や産婦人科医拒否問題が、この事件を通して表面化した。単なる一過性の出来事でないことを、多角的にその背景にある現状を追跡し、読者に問題提起したことが高く評価されよう。 政治的に若干の改善もなされたことは、このキャンペーンの成果ともいえる」「産婦人科を中心として現代医療の欠陥を詳細に記述している。これは国民にとって緊急な問題である」 「今回の事件に怒りを禁じ得ない。これが現代日本の産科の軽視、救急体制の実情かと思うと、政府の『子育て支援』は一体何をやっているのか。体制不備の改善に大きく貢献した」などと評価された。
放送の部
【坂田記念ジャーナリズム賞(1件)】
★NHK大阪放送局発達障害問題取材班
代表=相澤冬樹・報道部デスク
かんさい特集「発達障害を知っていますか」
推薦理由
発達障害は最近の研究で障害の原因と特徴が明らかになってきたが、犯罪と直接結びつける偏見や誤解もあって、親たちの不安や悩みは深刻になってきている。取材班は、発達障害の子どもを抱える親や周囲の関係者と粘り強く出演交渉を重ね、当事者の声や生活ぶりを追いながら、発達障害児の置かれた実情や親たちの苦悩、さらには適切な対処法や社会に適応できた例などを丹念に検証した。まず、関西地区のローカルニュースで5回シリーズで伝えたところ反響が大きかったため、緊急の特集番組「かんさい特集」として放送。その後も反響が相次いだため、朝の全国ニュースで3回シリーズの企画ニュースとして放送した。これらキャンペーン報道は、発達障害児のいる家族だけでなく、障害の知識のなかった親や医療関係者、「特別支援教育」を控えた教育現場からも理解不足や対応の不十分さを指摘する声が相次ぎ、速やかな対策を促した。
授賞理由
選考委員会では「発達障害については新聞等で知ってはいたが、テレビ画面を通して実際の障害の具体的姿の一面を見ることができた。発達障害といっても一様ではなく、様々な障害の状況があることを丁寧に映し出していた。発達障害児を抱える家族が画面に出ることを承諾するまでには、スタッフの真摯な対応とそれに対する理解が深められた結果であろう。親の苦悩や苦労も映像から伝わってきて、この障害についての理解と学習のためには、このような番組がぜひ放送されてほしいと実感した。この番組を全国ニュースの時間帯などでも放映したことにより、この深刻な問題について世論を喚起した」などと評価された。
第2部門(国際交流・国際貢献報道)
放送の部
【坂田記念ジャーナリズム賞(1件)】
★関西テレビ放送報道部ディレクター・西山直樹
ドキュメンタリー「類人猿ボノボの棲む森で」
推薦理由
ボノボは初期人類に最も近く、ヒトと98%以上同じ遺伝子を持つ類人猿で、チンパンジーやヒトと違い、殺し合いをしない。この番組は、内戦後のアフリカ中部コンゴ民主共和国で、ボノボの研究に青春を賭けた日本人研究者とともに、絶滅の危機にあるボノボとそれを取り巻く人間社会の混乱を長期取材した。番組では、人類の進化の過程や暴力のない平和な社会を考えるときに不可欠の存在といわれるポノボと、内戦後初めてボノボの生息する奥地の森に戻った日本人研究者を主人公に、「戦争がやまない国に生息する、争わない類人猿」を描いた。日本人研究者は人類の未来に欠かせないポノポ研究の意義を訴えるが、内戦で困窮した村人には通じない。「環境保全を訴えて大団円を迎える」という予定調和に終わらない番組の内容は視聴者に深い感銘を与えた。
授賞理由
選考委員会では「人類と未来の関係が危ぶまれてきた今日、ボノボの存在は極めて貴重である」「愛くるしいボノボが人間のあり方を問う。ボノボは平和を維持する本能的宿命をもっているのに、内戦はボノボを食い、森と村人の心を害し、研究者を追い出す。哀切な結末が胸を締めつける」「この番組が挑んだのは、人間は自然の一部であると確信してボノボの研究を続ける姿の正確な描写である。この目的は見事に結実し、この森の世界にも政治家や業者の利権があることまでを、歴史的経過をあわせ見事に表現した。日本人研究者が継続的努力によってどこまで何ができるかという視点を作品に加えた制作者の努力を多としたい。これは放送が社会貢献を長期的視点で行う、いわゆる放送マインドの実践である」などと評価された。