第3回坂田記念ジャーナリズム賞(1995年)

(敬称略)

第1部門(スクープ・企画報道)

第2部門(国際交流・国際貢献報道)

新聞の部

海外研修補助

・産経新聞大阪本社編集局「新風 アジア太平洋」取材班(代表=鳥海美朗・社会部次長)
 平成7年はAPEC大阪会議の年。年間テーマの一つに「アジア太平洋地域」を据え、同年1月から12月までシリーズ「大衆文化」(取材地・香港、台北)、「女性問題」(シンガポール、マレーシア)、「環境問題」(タイ、モンゴル)などを連載。掲載は朝刊1面で、統一テーマを「新風 アジア太平洋」として9シリーズの展開でした。経済の急成長が地域の人々の日常生活にどんな変化をもたらしているのか、また大阪、関西とどのような交流があるのかも追跡しました。

・奈良新聞「50年目の日本」特別取材班(代表=川筋宏・報道部記者)
 戦中世代から戦後世代へと受け継がれた太平洋戦争の実感は、戦後世代から次の世代へと引き継がれて、「2度目の継承」の時期を迎えている。しかし、戦後世代からのものは間接的体験の継承になっており、前の直接的体験に比べて現実味が薄らいでいる、との視点で企画。「50年目の日本風化する戦争」のタイトルで平成7年7月28日から22回連載。戦後100年、150年にも通用するような反戦平和の思想、運動はどんなものになるのかを追求しました。

昨年の研修

・産経新聞大阪本社「関西発! LOOK WEST」取材班
 社会部の岡崎秀俊記者を平成7年8月ニュージーランドへ派遣。日本語を教える中等教育、関西に焦点を合わせる経済人、地震国として大震災対策に乗り出す姿を取材しました。企画記事「KANSAI発」に「ニュージーランドと日本 強まる絆」「変わるニュージーランド 脱欧入亜」が掲載されました。

・奈良新聞取材班
 浅野詠子記者を台湾、西原秀典記者を香港へ派遣。浅野記者は、明治時代台湾に渡ったとされる奈良・吉野杉の造林技術の確認と林業の現状を取材。平成7年12月「海を渡った吉野杉 緑の台湾」として5回連載されました。西原記者は奈良県から多くの企業が進出している香港の経済活動を取材、同年9月「香港を行く アジアの金融センター」として2回のルポが掲載されました。

第3回坂田賞授賞理由

第1部門(スクープ・企画報道)

新聞の部

【坂田記念ジャーナリズム賞(1件)】
★毎日新聞大阪本社「希望新聞」取材班
 代表=深井麗雄・特別報道部長

推薦理由

 取材班は、特別報道部と学芸部、社会部、地方部など約100人で編成。阪神大震(1995年1月17日)の長期的かつユニークな支援事業と、「希望新聞」など紙面を連動させた“希望キャンペーン”。震災の現場を取材し、被災者のニーズを熟知している記者が紙面作りと同時平行して思い切った発想で救援事業を企画、実施し、その経験をフィードバックして取材活動をさらに深めて報道しました。また、この震災をいち早く「阪神大震災」と呼び、長期的かつユニークな被災者支援事業と、先駆けて設けた特別紙面「希望新聞」を連動させました。この“希望キャンペーン”とも言える企画報道に対して、選考委員会では「地道に、きめ細かい取材で被災者への行き届いた配慮が感じられた」との評価でした。

放送の部

【坂田記念ジャーナリズム賞(1件)】
★每日放送特別報道部長・山本利樹
 「大阪大空襲ドキュメンタリー」

推薦理由

 大阪は昭和20年に春から終戦の前日まで約50回B29による大襲撃を受け、死者は12,000人におよぶと言われています。テレビでその全体像を取り上げることは少なく、山本特別報道部長は、終戦50年の年、当時特報部ディレクターとして「大阪大空襲」を今真正面から取り上げておかないと今後はますます難しくなると判断しました。高齢化の進む体験者を訪ね歩き、生々しい話を収録。空襲で障害の残った人も粘り強く説得、カメラの前に出て重い体験を語ってもらいました。また、山中に墜落したB29の残骸を見つけるなど貴重な資料や映像の発掘も。これらを「大阪大空襲ドキュメンタリーシリーズ」として1995年の3月19日「大阪大空襲・50年目の証言」、8月20日「最後の大空襲・大阪陸軍造兵廠の8月14日」、10月29日「村に敵兵が降ってきた」を放送しました。

第2部門(国際交流・国際貢献報道)

新聞の部

【坂田記念ジャーナリズム賞(1件)】
★朝日新聞大阪本社「核」取材班
 代表=斎藤忠臣・社会部編集委員

推薦理由

 取材班は社会部、通信部、科学部、広島支局による11人で編成。広島・長崎から50年、3部構成「核廃絶への道」を展開。「その不幸な道程を正当化してきたのが大国の核抑止論ではなかったか」と国際政治の舞台だけでなく世界各国の情報や市民の行動を追跡しました。冷戦が終わったのに核保有国は依然として核抑止論と決別できないでいる。抑止の対象は誰なのか、矛盾と混乱の中にある関係国の核戦略現場を歩き、精緻に見える抑止論の虚構性を突いたのが第1部「最前線からの報告」(平成6年6月7日~16回)。第2部「抑止を越えて」(同年12月6日~9回)では、核戦争を防止してきたのはむしろ核兵器を拒否する世論と世界の市民のさまざまな営みであったのではと検証。第3部「日本の選択」(同7年5月30日~10回)では非核3原則を国是としながら核抑止の立場を取り続ける日本の「二律背反」を。

授賞理由

 選考委員会では「地球的な視野で取材され、核兵器の問題を懇切丁寧に「解説」と評価されました。

放送の部

【坂田記念ジャーナリズム賞(1件)】
★NHK大阪放送局「アジア発見」プロジェクト
 代表=三枝武・編成部長

推薦理由

 プロジェクトは大阪放送局による20人で編成。変貌著しいアジア地域で、発展を支える普通の人々の暮らしや夢に焦点を当ててみようと企画され、プロジェクトが中核になり、全国の地域放送局の人材も加わって平成7年度の新番組 (毎週木曜日の夜24分間)としてスタートさせました。これまでに「“夢” 駆けるバイク通り」(ベトナム・3月30日放送)、「春・草原にカシミヤが動く」(モンゴル・4月20日放送)などを制作しています。視聴者からは「主人公の目の輝きにアジア発展の原動力を感じた」「アジアの人々が皆家族の絆を大切にしている。その姿に共感し反省もさせられた」などの声が寄せられているそうです。好評のため今年度も継続して取材、放送されています。

授賞理由

 選考委員会では「知られざる素顔、小さな村まで変化が及んでいる姿など現地事情に詳しくないと取り組めない問題をさらりとまとめ、好感が持てた」との評価でした。

坂田賞一覧